日本のIT業界では継続的に人手不足が深刻化しています。そんな中、2020年にはコロナ禍があり、社会状況には大きな変化がありました。IT分野の人手不足・外国人材の現状はどうでしょうか。
IT分野の求人倍率には変化あり
2020年のIT分野(情報処理・通信技術)全体の求人倍率は、1.29倍でした。2019年は2.47倍でしたので、1.18ポイント減少したことになります。求人倍率が下がったのには、コロナ禍による求人数の低下と求職者の増加が大きく影響しています。実際の数値を見てみると、求人数は2019年の49,752に対し、2020年は37,324と約25%減になり、求職者数は2019年の20,149人から28,870人と約45%も増加しました。コロナ禍で先行き不透明な中、企業としては積極的な求人を減らし出費を抑えるような動向が目立ち、人材としてはより条件の良い会社への転職や、別業種で仕事を失った人の流入が増えたことが要因です。この求人が減り、求職が増加する傾向はほとんどの業種で同様に起きており、職種合計では求人数は-18.7%、求職者数は+17.5%という結果になりました。IT分野は他業種よりも求人数と求職者数が大きく変動しており、有効求人倍率の大幅な低下につながったものと思われます。一方、このような影響を存分に受けつつも、依然として1.29倍の有効求人倍率を有しており、人手不足が解消されたわけではないということもわかります。
10年後には79万人の不足になるとい試算も
今後、5Gの浸透や、働き方改革・テレワークなどが進むにつれて、IT分野が担う仕事量は増加していくと考えられます。経済産業省がまとめた『平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備-IT人材需要に関する調査-調査報告書』によると、生産性上昇率が0.7%とした場合、2030年時点でのIT分野の人手不足は最低でも16.4万人、多い場合には78.7万人にのぼるとされています。今からできる対策としては①国内の教育体制を整え、IT人材の供給量を増やす。②生産性の向上を推進し、人手のかからない体制を構築する。③外国人材を採用し、国内外から優秀な人材を獲得する。の3種類があるでしょう。ただし、国内の教育体制を整えたとしても、人口減少が続く日本において、最大78.9万人の不足を解消するのは非常に困難です。すると、大きなカギとなるのは、生産性の向上と外国人材の採用の2つだと言えます。こと人材供給の面では、外国人材の積極的な採用が必要となるでしょう。
外国人材の雇用状況
日本のIT企業に従事する外国人材はすでに7万人以上おり、年々上昇傾向にあります。2016年のIT分野で働く外国人材はわずか4万3千人でした。その後、2017年には5万2千人、2018年には5万7千人、2019年には6万7千人、2020年には7万1千人と急激に伸び続けています。2020年の上昇率は他の年に比べ低迷しましたが、これもやはり新型コロナウィルスによる入国制限の影響を強く受けています。外国人雇用事業所でも、2019年の11,058カ所から2020年には11,912カ所と900程増加しており、コロナ禍においても依然として外国人材への期待値は上昇していると言えます。
増加する東南アジアの人材
日本で働く外国人を国籍別でみると、最多はベトナムの約44万人、ついで中国の約42万人、フィリピンの18万人、ブラジルの13万人、ネパールの10万人です。外国人労働者の総数が172万人なので、全体の半数をベトナムと中国で占めていることになります。2019年までは中国国籍の人材が1位でしたが、2020年にベトナムが1位となりました。ベトナムの労働者数が激増している背景には、技能実習制度の影響が大きいと考えられます。ベトナムはこの制度を真っ先に提携した国で、国を挙げて日本へ人材を送り出しています。技能実習生の流入が増えたことで、一般職の人材も比例して増加しました。実際に、過去5年間の人材の上昇率は中国の1.2倍に対し、ベトナム人材は2.5倍でした。ベトナム以外にも労働人口が増えた国は他にもあります。インドネシアは2016年の2万7千人から2020年には5万3千人にとなり1.9倍に、ネパールは1.8倍になっています。東南アジア出身の外国人労働者数が急増している近年の傾向がこの結果からも見て取れます。特に、ベトナム、フィリピン、インドネシアといったASEAN諸国は大幅な上昇を見せており、今後も増えると予想されます。これらの国は日本と様々な協定を結んでいることが多く、親日派も多いことで知られています。日本で働くことを夢見る若者が多く、国の教育制度の充実や、支援の拡充に合わせて増加しています。また、これらの国は人口が増加傾向にあることも注目すべき点です。ASEANのほとんどの国はまさに経済成長の真っ只中にあります。こうしたなか、優秀な人材は就職の地を外国に求める傾向があります。親日の方が多いASEAN地域では、日本がそのひとつとなっているのです。特にインドネシア人の労働者人口は、5年の間に2倍近く増えましたが、世界4位の人口を抱える国であることを考えると、今後さらなる期待が持てそうです。
まとめ
2020年の外国人労働者数の増加は、それまで比べ鈍化傾向です。有効求人倍率も前年比で大幅に低下しました。一方で、依然として高い求人倍率となっていることから、IT業界の人手不足の解消には抜本的な対策(外国人材の積極的採用)が必要になっています。現在はコロナ禍の影響色濃い時期ですが、今から後々を見据えた行動を起こしていくことが重要になるでしょう。
※参考:厚生労働省『外国人雇用状況の届出状況表一覧(令和2年10月末現在)』
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日本のIT業界では継続的に人手不足が深刻化しています。そんな中、2020年にはコロナ禍があり、社会状況には大きな変化がありました。IT分野の人手不足・外国人材の現状はどうでしょうか。
IT分野の求人倍率には変化あり
2020年のIT分野(情報処理・通信技術)全体の求人倍率は、1.29倍でした。2019年は2.47倍でしたので、1.18ポイント減少したことになります。求人倍率が下がったのには、コロナ禍による求人数の低下と求職者の増加が大きく影響しています。実際の数値を見てみると、求人数は2019年の49,752に対し、2020年は37,324と約25%減になり、求職者数は2019年の20,149人から28,870人と約45%も増加しました。コロナ禍で先行き不透明な中、企業としては積極的な求人を減らし出費を抑えるような動向が目立ち、人材としてはより条件の良い会社への転職や、別業種で仕事を失った人の流入が増えたことが要因です。この求人が減り、求職が増加する傾向はほとんどの業種で同様に起きており、職種合計では求人数は-18.7%、求職者数は+17.5%という結果になりました。IT分野は他業種よりも求人数と求職者数が大きく変動しており、有効求人倍率の大幅な低下につながったものと思われます。一方、このような影響を存分に受けつつも、依然として1.29倍の有効求人倍率を有しており、人手不足が解消されたわけではないということもわかります。
10年後には79万人の不足になるとい試算も
今後、5Gの浸透や、働き方改革・テレワークなどが進むにつれて、IT分野が担う仕事量は増加していくと考えられます。経済産業省がまとめた『平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備-IT人材需要に関する調査-調査報告書』によると、生産性上昇率が0.7%とした場合、2030年時点でのIT分野の人手不足は最低でも16.4万人、多い場合には78.7万人にのぼるとされています。今からできる対策としては①国内の教育体制を整え、IT人材の供給量を増やす。②生産性の向上を推進し、人手のかからない体制を構築する。③外国人材を採用し、国内外から優秀な人材を獲得する。の3種類があるでしょう。ただし、国内の教育体制を整えたとしても、人口減少が続く日本において、最大78.9万人の不足を解消するのは非常に困難です。すると、大きなカギとなるのは、生産性の向上と外国人材の採用の2つだと言えます。こと人材供給の面では、外国人材の積極的な採用が必要となるでしょう。
外国人材の雇用状況
日本のIT企業に従事する外国人材はすでに7万人以上おり、年々上昇傾向にあります。2016年のIT分野で働く外国人材はわずか4万3千人でした。その後、2017年には5万2千人、2018年には5万7千人、2019年には6万7千人、2020年には7万1千人と急激に伸び続けています。2020年の上昇率は他の年に比べ低迷しましたが、これもやはり新型コロナウィルスによる入国制限の影響を強く受けています。外国人雇用事業所でも、2019年の11,058カ所から2020年には11,912カ所と900程増加しており、コロナ禍においても依然として外国人材への期待値は上昇していると言えます。
増加する東南アジアの人材
日本で働く外国人を国籍別でみると、最多はベトナムの約44万人、ついで中国の約42万人、フィリピンの18万人、ブラジルの13万人、ネパールの10万人です。外国人労働者の総数が172万人なので、全体の半数をベトナムと中国で占めていることになります。2019年までは中国国籍の人材が1位でしたが、2020年にベトナムが1位となりました。ベトナムの労働者数が激増している背景には、技能実習制度の影響が大きいと考えられます。ベトナムはこの制度を真っ先に提携した国で、国を挙げて日本へ人材を送り出しています。技能実習生の流入が増えたことで、一般職の人材も比例して増加しました。実際に、過去5年間の人材の上昇率は中国の1.2倍に対し、ベトナム人材は2.5倍でした。ベトナム以外にも労働人口が増えた国は他にもあります。インドネシアは2016年の2万7千人から2020年には5万3千人にとなり1.9倍に、ネパールは1.8倍になっています。東南アジア出身の外国人労働者数が急増している近年の傾向がこの結果からも見て取れます。特に、ベトナム、フィリピン、インドネシアといったASEAN諸国は大幅な上昇を見せており、今後も増えると予想されます。これらの国は日本と様々な協定を結んでいることが多く、親日派も多いことで知られています。日本で働くことを夢見る若者が多く、国の教育制度の充実や、支援の拡充に合わせて増加しています。また、これらの国は人口が増加傾向にあることも注目すべき点です。ASEANのほとんどの国はまさに経済成長の真っ只中にあります。こうしたなか、優秀な人材は就職の地を外国に求める傾向があります。親日の方が多いASEAN地域では、日本がそのひとつとなっているのです。特にインドネシア人の労働者人口は、5年の間に2倍近く増えましたが、世界4位の人口を抱える国であることを考えると、今後さらなる期待が持てそうです。
まとめ
2020年の外国人労働者数の増加は、それまで比べ鈍化傾向です。有効求人倍率も前年比で大幅に低下しました。一方で、依然として高い求人倍率となっていることから、IT業界の人手不足の解消には抜本的な対策(外国人材の積極的採用)が必要になっています。現在はコロナ禍の影響色濃い時期ですが、今から後々を見据えた行動を起こしていくことが重要になるでしょう。
※参考:厚生労働省『外国人雇用状況の届出状況表一覧(令和2年10月末現在)』