「外国人技能実習制度」について聞いたことはあるけれど、どんな制度かわからない方は多いのではないでしょうか。この記事で技能実習のポイントについてお伝えします。
日本での就職に悩む留学生
現在、日本では約30万人(2018年)※1の留学生が生活をしています。留学生の人数は年々上昇を続けており、2011年と比較するとおおよそ2倍にも増加していることがわかります。ところが、日本で学び、日本に慣れ親しんだ彼らでも日本での就職活動は苦戦を強いられています。留学生における雇用状況と課題を考えます。
技能実習制度の現状
日本学生支援機構が発表したデータによると、日本での就職を希望する外国人留学生は全体の64%※2でした。ところが、実際に日本で就職できた外国人留学生は32%※3にとどまっています。一般の大卒求人倍率は1.8倍ともいわれ、人手不足が叫ばれる日本において、留学生の低い就職状況は大きな課題と言わざるを得ません。こういった課題はなぜ起こるのでしょうか。留学生や外国人材、日本企業を対象に行われたアンケートをみると、その一端が見えてきます。下記は2015年に経済産業省が行った『外国人留学生の就職及び定着率状況に関する調査結果』※4の中で、日本で働く外国人材と現役の留学生が回答した「就職活動中に困ったこと」を回答率の高い順にまとめたものです。 ■外国人社員対象 ①入社後の仕事内容が不明確 37.7% ②日本の就職活動の仕組みが分からない 30.8% ③日本語による適性試験や能力試験が難しい 30.5% ④外国人留学生向けの求人が少ない 26.4% (以下略) ■留学生対象 ①外国人留学生向けの求人が少ない 38.5% ②日本の就職活動の仕組みが分からない 33.8% ③日本語による適性試験や能力試験が難しい 32.2% ④業界研究や企業研究の仕方が分からない 29.0% (以下略) どちらも日本の就活の仕組みに対して戸惑いがあることがわかります。日本の就職活動は独自のシステムが採用されていると言われています。留学生はこのシステムを理解するのに時間がかかってしまうのです。たとえば、日本で一般的な在学中の就職活動は海外では一般的ではなく、学生の間は学業に専念することが常識とされている国は多数あります。日本人学生が就活を始める時期に留学生は乗り遅れてしまい、良い求人に巡り合えなかったり、就活期間自体が終わってしまったりします。こうしたことが「外国人留学生向けの求人が少ない」に対する回答の多さにもつながっています。外国人留学生が難しいと感じる日本の就職活動のシステムについては、大学や支援団体などが協力して正しい情報を広く伝えていく必要があると言えます。
留学生だからではなく、欲しい人材かどうか
一方で、日本企業が外国人留学生をどのように考えているのか調査すると日本側の課題も見えてきます。先ほどの『外国人留学生の就職及び定着率状況に関する調査結果』で、日本企業を対象に行った「外国人社員の採用ルート」に関する質問では、実に48.2%の企業が「外国人社員は採用しない」と回答しています。更に、外国人留学生を採用しない理由を聞くと「海外事業展開の計画がなく外国人社員の必要性がないから」が51.9%と2位の「外国人社員の活用メリットが分からないから」の19.5%大きく突き放す形で最も多い回答となっています。総合すると、日本企業の4分の1は外国人を雇用することに対し「海外進出をしなければメリットがない」と考えていることになります。しかし、これは必ずしも正しい認識ではないと言えます。下記は同様の調査で外国人留学生の採用実績がある企業へ採用理由を尋ねた回答の結果です。 ①国籍に関わらず選考を行った結果、留学生が採用されたため 55.8% ②社内の多様性を高め、職場を活性化するため 55.8% ③留学生の母国に関わらず海外事業を開拓・拡大するため 44.7% 海外人材のメリットとして、海外進出に関する項目も高い回答率ではありますが、海外での業務の有無に関係ない場面でその意義を見出していることがわかります。自社の理念に合った人材かどうかに重きを置くと、外国人留学生や日本人新卒生と言った枠を超えて良い採用活動が出来るのではないでしょうか。
外国人材が生み出す好循環
ビジネスのグローバル化や働き方の多様化、日本の人材不足などを鑑みると、外国人材の採用は日本企業の中長期的な成長戦略の重要なファクターとなるでしょう。しかし外国人とともに働くことに慣れていない日本人にとって、外国人の採用には大きな壁を感じてしまうかもしれません。それでも、留学生と企業がお互いに就労について理解を深め適切に対応することで良い関係を築くことができ、両社にとってWin-Winの関係が生まれるはずです。留学生に目を向け、日本に馴染みのある人材を雇用することで、外国人採用が進んでいない企業においてもスムーズな採用が可能になるのではないでしょうか。
まとめ
技能実習の課題を解決するには、受け入れ先機関が労働法令を遵守し実習生が安心して実習を行える環境整備が必要となります。そのためには、実習生を紹介する監理団体の選定が重要となります。実習生へのフォロー体制や受け入れ先機関に対するサポート体制が整っている適切な監理団体を選定し、受け入れ先機関、監理団体、実習生が連携することが実りある実習へとつながることでしょう。
出典: ※1 日本学生支援機構HP『平成30年度外国人留学生在籍状況調査結果』 ※2 日本学生支援機構HP『平成29年度私費外国人留学生生活実態調査概要』 ※3 日本学生支援機構HP『平成29年度外国人留学生進路状況調査』 ※4 新日本有限責任監査法人『外国人留学生の就職及び定着率状況に関する調査結果(経済産業省委託事業)』(2015年3月)
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「外国人技能実習制度」について聞いたことはあるけれど、どんな制度かわからない方は多いのではないでしょうか。この記事で技能実習のポイントについてお伝えします。
日本での就職に悩む留学生
現在、日本では約30万人(2018年)※1の留学生が生活をしています。留学生の人数は年々上昇を続けており、2011年と比較するとおおよそ2倍にも増加していることがわかります。ところが、日本で学び、日本に慣れ親しんだ彼らでも日本での就職活動は苦戦を強いられています。留学生における雇用状況と課題を考えます。
技能実習制度の現状
日本学生支援機構が発表したデータによると、日本での就職を希望する外国人留学生は全体の64%※2でした。ところが、実際に日本で就職できた外国人留学生は32%※3にとどまっています。一般の大卒求人倍率は1.8倍ともいわれ、人手不足が叫ばれる日本において、留学生の低い就職状況は大きな課題と言わざるを得ません。こういった課題はなぜ起こるのでしょうか。留学生や外国人材、日本企業を対象に行われたアンケートをみると、その一端が見えてきます。下記は2015年に経済産業省が行った『外国人留学生の就職及び定着率状況に関する調査結果』※4の中で、日本で働く外国人材と現役の留学生が回答した「就職活動中に困ったこと」を回答率の高い順にまとめたものです。 ■外国人社員対象 ①入社後の仕事内容が不明確 37.7% ②日本の就職活動の仕組みが分からない 30.8% ③日本語による適性試験や能力試験が難しい 30.5% ④外国人留学生向けの求人が少ない 26.4% (以下略) ■留学生対象 ①外国人留学生向けの求人が少ない 38.5% ②日本の就職活動の仕組みが分からない 33.8% ③日本語による適性試験や能力試験が難しい 32.2% ④業界研究や企業研究の仕方が分からない 29.0% (以下略) どちらも日本の就活の仕組みに対して戸惑いがあることがわかります。日本の就職活動は独自のシステムが採用されていると言われています。留学生はこのシステムを理解するのに時間がかかってしまうのです。たとえば、日本で一般的な在学中の就職活動は海外では一般的ではなく、学生の間は学業に専念することが常識とされている国は多数あります。日本人学生が就活を始める時期に留学生は乗り遅れてしまい、良い求人に巡り合えなかったり、就活期間自体が終わってしまったりします。こうしたことが「外国人留学生向けの求人が少ない」に対する回答の多さにもつながっています。外国人留学生が難しいと感じる日本の就職活動のシステムについては、大学や支援団体などが協力して正しい情報を広く伝えていく必要があると言えます。
留学生だからではなく、欲しい人材かどうか
一方で、日本企業が外国人留学生をどのように考えているのか調査すると日本側の課題も見えてきます。先ほどの『外国人留学生の就職及び定着率状況に関する調査結果』で、日本企業を対象に行った「外国人社員の採用ルート」に関する質問では、実に48.2%の企業が「外国人社員は採用しない」と回答しています。更に、外国人留学生を採用しない理由を聞くと「海外事業展開の計画がなく外国人社員の必要性がないから」が51.9%と2位の「外国人社員の活用メリットが分からないから」の19.5%大きく突き放す形で最も多い回答となっています。総合すると、日本企業の4分の1は外国人を雇用することに対し「海外進出をしなければメリットがない」と考えていることになります。しかし、これは必ずしも正しい認識ではないと言えます。下記は同様の調査で外国人留学生の採用実績がある企業へ採用理由を尋ねた回答の結果です。 ①国籍に関わらず選考を行った結果、留学生が採用されたため 55.8% ②社内の多様性を高め、職場を活性化するため 55.8% ③留学生の母国に関わらず海外事業を開拓・拡大するため 44.7% 海外人材のメリットとして、海外進出に関する項目も高い回答率ではありますが、海外での業務の有無に関係ない場面でその意義を見出していることがわかります。自社の理念に合った人材かどうかに重きを置くと、外国人留学生や日本人新卒生と言った枠を超えて良い採用活動が出来るのではないでしょうか。
外国人材が生み出す好循環
ビジネスのグローバル化や働き方の多様化、日本の人材不足などを鑑みると、外国人材の採用は日本企業の中長期的な成長戦略の重要なファクターとなるでしょう。しかし外国人とともに働くことに慣れていない日本人にとって、外国人の採用には大きな壁を感じてしまうかもしれません。それでも、留学生と企業がお互いに就労について理解を深め適切に対応することで良い関係を築くことができ、両社にとってWin-Winの関係が生まれるはずです。留学生に目を向け、日本に馴染みのある人材を雇用することで、外国人採用が進んでいない企業においてもスムーズな採用が可能になるのではないでしょうか。
まとめ
技能実習の課題を解決するには、受け入れ先機関が労働法令を遵守し実習生が安心して実習を行える環境整備が必要となります。そのためには、実習生を紹介する監理団体の選定が重要となります。実習生へのフォロー体制や受け入れ先機関に対するサポート体制が整っている適切な監理団体を選定し、受け入れ先機関、監理団体、実習生が連携することが実りある実習へとつながることでしょう。
出典: ※1 日本学生支援機構HP『平成30年度外国人留学生在籍状況調査結果』 ※2 日本学生支援機構HP『平成29年度私費外国人留学生生活実態調査概要』 ※3 日本学生支援機構HP『平成29年度外国人留学生進路状況調査』 ※4 新日本有限責任監査法人『外国人留学生の就職及び定着率状況に関する調査結果(経済産業省委託事業)』(2015年3月)