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待ったなし!日本の人手不足

ニュースなどでは、人手不足の話題が絶えません。
人手不足の原因はどこにあるのでしょうか。

待ったなし!日本の人手不足

止まらない生産年齢人口の減少

15~64歳の人口を「生産年齢人口」と呼びます。労働しているかどうかに関わらず、労働できる年齢の人口のことを指す経済用語です。反対に、生産年齢人口以外の人口のことを「被扶養人口」と呼びます。当然ですが、全人口に占める生産年齢人口の割合が高い程ほど、経済は循環しやすくなります。昨今の日本はどうでしょうか。  国立社会保障・人口問題研究所が平成27年の国勢調査を基に公表した、日本の将来推計人口によると、日本の生産年齢人口は毎年約100万人単位で減少し、2060年には約4,418万人になると推計されています。2015年次の生産年齢人口実績値7,728万人と比較すると約42%減少することになるのです。主な要因は少子高齢化です。日本の出生率は1970年代中旬ごろから下降を始め、2018年は1.42でした。成人2名から2人以上の子供が生まれなければ、人口は増えません。また、日本の出生率ピークを記録した1940年代後半生まれの世代(いわゆる団塊世代)が70歳代に入り、高齢人口も極端に増加していることで、相対的に生産年齢人口の割合が少なくなっているのです。ちなみに、団塊世代の出生率は4.32でした。このことからも、いかに日本の出生率が下がったのか見て取れます。 こういった生産年齢人口の減少は先進国ではすべての国で起きていますが、日本は特に進行が速いとされています。アメリカやドイツなどは出生率が2を割っているにも関わらず人口の大きな減少は起きていません。これは人口の減少を移民によって抑制しているからです。ドイツの場合、積極的な移民政策を実施してきました。トルコや中東欧、南欧から多くの移民がドイツに入国し、若い世代がドイツ国内で仕事をすることで、生産性を確保しています。これにより企業の生産性が向上しているのです。  日本はこういった「外国人材」に対して、適切な政策をとれていません。日本が外国人材に積極的な態度をとらない限り、日本の生産年齢人口減少は歯止めがかからない状況です。

失業率・求人倍率から見る、日本の人手不足

実際のところ、日本の企業はどれくらい人手に困っているのでしょうか。一般的に失業率が下がると人手不足が進行していると考えられますが、2018年の失業率は2.4%でした。過去10年で最も低い数値で、リーマンショック直後の2009年と比べると、2.7ポイント下がっています。ここ40年の中で見ても、最も低い数値が1980年の2.02%ですので、高度経済成長期並みの人手不足だといえます。 また、有効求人倍率も高い水準で推移しています。2019年1月の有効求人倍率は1.6倍台で、東京都と福井県で2.12倍、広島県で2.08倍、岐阜県で2.04倍、岡山県で2.00倍と2倍を超える地域も存在します(一番低い数値は、北海道、高知県、長崎県、沖縄県の1.23倍でした)。都市部や地方関係なく全国的に高い数値を維持しています。  業種別にみると驚愕な数値を示している分野もあります。一般事務は0.38倍と落ち着いていますが、情報処理・通信技術者では2.65倍、輸送・機械運転では2.74倍、接客・給仕では2.96倍、介護サービスでは3.61倍、建築・土木・測量技術者にいたっては6.82倍にも上ります。  建築・土木・測量技術者の人手不足が深刻化しているのには大きな原因が2つあると言われています。需要が伸びていることと、若手が獲得できないことです。日本では現在、震災復興による建設とアベノミクス政策による公共事業増加に加え、2020年のオリンピック特需が重なり、建設ラッシュが続いています。また、各地で再開発が進み、ビルの建て替えも頻繁に起きています。リーマンショック後に落ちた需要がここへきて急激に高まっているのです。ところが、建設業界では、若手社員の獲得に苦戦しています。建設業界の20~24歳在職率は1995年の6.4%に対して、2010年には2.4%にまで落ち込みました。若者にとって建設業界に「きつい・汚い・危険」の3Kのイメージがあり敬遠されがちなことが、若者の入職率低下につながっていると考えられます。  こうした、高需要と低入職が重なると大きな人手不足に陥ります。建築・土木・測量技術者について特記しましたが、他の業種でも同様の現象は起こると考えられます。今後は高齢化による需要の高まりから、医療や福祉業界などで人手不足が顕著になると予想されています。医療の現場では、医師国家試験に合格する人数は上昇傾向にありますが、それを上回るペースで医師を必要とする高齢者が増えるため人手不足は進行すると言われています。  先ほど、高度経済成長並みという表現をしました。実は、経済成長による失業率の低下や求人倍率の上昇はあらゆる先進国が経験をしています。しかし、現在の日本のように、停滞気味の経済状況で同様の状況が起きた国はこれまでの歴史上少なく、そこから回復した国もありません。日本は今、大きな岐路に立たされているのです。

人手不足解消のためにできること

ここまで深刻化する人手不足の原因について簡単に説明してきました。それでは具体的にどのような対策をとれば良いでしょうか。
<待遇改善と職場づくり>  働き方改革がスタートし、職場環境は向上しているはずです。それでも、新入社員目線で見れば、同業他社で、より好条件があればそちらに目を向けるものです。休日の確保や残業を減らす取り組みなど、分かりやすい形で改善することが求められています。  また、離職を減らすという意味では職場環境の改善が重要だと考えられます。離職の理由の上位は「上司の仕事の仕方に納得できなかった」「同僚や先輩後輩と馬が合わなかった」などの人間関係に起因する内容です。つまり深い人間関係を築くことで離職率を下げる事ができるということです。ある企業では、社内の休憩スペースを明るくし、お菓子やドリンクを設置したところ、社内交流が活発になった例があります。ちょっとしたことでも、人が自然に会話できるような環境に改善することで大きな成果を生むかもしれません。
<様々な働き方や人材を認める>  フルタイムで働くのが難しい方や、育児を優先したい方は少なからずいます。時短勤務やテレワークなどの制度を導入することによって、こういった方に効率よく仕事をしてもらうことが出来ます。また、フレックスタイム制を導入する企業も増えています。フレックスタイム制とは、社員が始業時間や終業時間を自由に決められる制度です。企業によってはコアタイム(一日の内、必ず出社していなければいけない時間)を設けるなどして、社内交流が無くならないような対応をしています。  更に、近年注目されているのが海外人材です。ありがたいことに、日本で働きたいと考える外国人はたくさんいます。特に、ASEAN諸国出身の方は勉強熱心で、独自に日本語を勉強している方もいます。こういった国は発展途上国の為、日本の高度成長期のような勢いがあるため、日本企業としても今からつながりを作ることで、将来進出などを狙う際のメリットになると期待されています。日本政府も外国人の受け入れに力を入れており、2019年4月には「特定技能」をスタートさせました。この制度は人手不足の業種に特化しており、5年後には延べ34万人が日本で活躍する予定です。

まとめ

日本全体で起きている人手不足は、業種によっては非常に喫緊の問題となっています。これはその業種の従事者だけでなく、日本で生活するすべての人の日常生活に影響を与えうる深刻な問題です。日本を支えるという意味でも、日本企業は今後を決める重要な局面に立っています。これまでの固定観念や常識は捨てて、次の時代へ足を踏み出す必要があるかもしれません。